介護する家族の心のケア|
共倒れしないために

サイト管理人
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祖父母の施設入居・父親の入院と緩和ケアを経験。実体験をもとに情報をお届けします。
介護の情報は、そのほとんどが「介護される人」のためのものです。どんなサービスがあるか、どんな施設がいいか、いくらかかるか——。
でも介護は、「する側」の心と体も、少しずつ削っていきます。眠れない、疲れが抜けない、以前は気にならなかったことに苛立ってしまう。そういう変化が起きるのは、あなたが弱いからではありません。それだけの負担がかかっている、ということです。
この記事は、介護をしているあなた自身のための記事です。休んでいいということ、頼れる場所があるということを、公的機関が示している情報をもとに整理していきます。
⚠️ はじめにお読みください
この記事は、厚生労働省などが公開している情報をもとにまとめた一般的な内容(2026年7月時点)です。病気の診断や治療について判断するものではありません。心や体の調子で気になることがあるときは、かかりつけ医などの医療機関にご相談ください。

また、いま「もう無理だ」と感じているなら、この記事を読み終わらなくても構いません。相談先をまとめた章に先に進んでいただいて大丈夫です。

① 疲れているのは、あなたが弱いからではありません

介護をしている方から、こんな言葉が出てくることがあります。「自分が我慢すれば済むことなのに」「もっとうまくやれる人もいるのに」「親のことなのに、こんなふうに思ってしまう自分が嫌だ」。

まず、はっきりお伝えしたいことがあります。介護でつらくなるのは、性格や努力の問題ではありません。

介護は、体を使う仕事であり、気を張り続ける仕事であり、しかも終わりの時期が決められていない仕事です。それを、専門的な訓練を受けていない人が、ほかの生活と並行して、多くの場合ほとんど一人で担っています。仕事であれば交代の人がいて、勤務時間が決まっていて、休みがあります。家族介護にはそれがありません。

厚生労働省が自治体や地域包括支援センターの担当者向けに公表している「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル」(平成30年3月)は、そのタイトルに「介護者本人の人生の支援」という副題を掲げています。介護している家族は「介護の担い手」であるだけでなく、その人自身の人生を持った、支援を受ける対象でもあるという考え方です。

💚 この記事でいちばんお伝えしたいこと
  • あなたが疲れているのは、負担が大きいからです。あなたのやり方が悪いからではありません
  • 休むことは、介護から逃げることではありません。介護を続けられる形にすることです
  • 公的な支援は、介護される人のためだけのものではありません。介護する家族を支えることも、その目的に含まれています
  • 「相談する」は、いちばん最後の手段ではなく、いちばん最初にしていいことです

この先を読んでいて、「わかっているけど、そんな余裕がない」と感じたら、その感覚のほうが正しいです。余裕がないときに新しいことを始めるのは難しい。だからこの記事では、「自分で工夫すること」ではなく「人に渡すこと」を中心に書いています。

② 介護する家族に重なる4つの負担

「つらい」とひとことで言っても、その中身はいくつかの違う種類の負担が重なっています。分けて眺めてみると、「どこを誰に渡せばいいのか」が少し見えやすくなります。

負担の種類 具体的にどういうことか
身体的な負担 起こす・座らせる・入浴やトイレの介助といった、体を使う場面。夜中に何度も起きることによる睡眠不足。腰や肩、膝への負担。自分の通院や検診が後回しになる
精神的な負担 同じ話を何度も聞く、強い言葉を向けられる、目を離せない緊張が続く。「昔の親と違う」という喪失感。何かあったら自分の責任だという重圧。相談できる相手がいない孤立感
経済的な負担 医療費、おむつなどの消耗品、住まいの改修、施設や在宅サービスの費用。働き方を変えることによる収入の減少。「この先いくらかかるのか分からない」という不安
時間的な負担 自分の時間がなくなる。趣味や友人との予定を諦める。仕事の予定が立てられない。「何時間か自由になっても、何をしたいか思い出せない」という状態になることもあります

この4つのうち、介護サービスで直接減らせるのは、主に身体的な負担と時間的な負担です。そして、身体と時間の負担が減ると、精神的な負担も一緒に軽くなることが少なくありません。眠れるようになるだけで、同じ出来事の受け止め方が変わってくる、ということはあります。

ですから「気持ちがつらい」というときに、いきなり気持ちの持ち方を変えようとしなくて大丈夫です。まずは眠る時間・一人になれる時間を取り戻すほうから手をつけるのが、順番としては現実的です。

⚠️ 自分の体のことを後回しにしないでください
介護をしている方の話でよく出てくるのが、「自分の歯医者に3年行っていない」「健診の通知を捨てた」「風邪をひいても病院に行く時間がない」といったことです。

介護する人が倒れると、介護そのものが止まります。自分の受診は、わがままではなく、介護を続けるための必要な予定です。「その日は親をどうするか」が問題になるなら、それはケアマネジャーに相談していい内容です(デイサービスやショートステイの日程を、そこに合わせて調整してもらえる場合があります)。

③ 気づかれにくいつらさ——孤立と、終わりの見えなさ

介護のつらさの中で、周りから見えにくく、本人も言葉にしづらいものがいくつかあります。

「いつまで」が分からない

入院なら退院の見通しが立ちます。仕事なら終業時刻があります。介護には、それがありません。「あと〇年」と分かっていればがんばれるのに、それが分からない——この構造そのものが、人を消耗させます。

そして、この先を考えるとき、多くの方が言葉にできない矛盾を抱えます。「早く楽になりたい」と思ってしまう瞬間があり、そう思った自分を責める。この矛盾は、介護をしている方の多くが通る道だと言われています。そう思ったからといって、あなたが親を大切にしていないということには、まったくなりません。

社会からの孤立

介護が始まると、外に出る機会が減ります。誘いを断り続けているうちに、誘われなくなる。仕事を辞めた場合は、職場という「介護以外の場所」もなくなります。話し相手が親だけになり、その親との関係がうまくいかないときに、逃げ場がなくなる。

先に挙げた厚生労働省の家族介護者支援マニュアルでも、介護者が孤立しないようにすることが支援の重要な柱として扱われています。孤立は「性格の問題」ではなく、介護という状況が作り出すものだという前提で、公的な支援が組まれているということです。

まわりの言葉が刺さる

「よくやってるね」「あなたがいて親孝行だね」——悪意のない言葉が、追い詰めることがあります。「もっとやらなければ」と受け取ってしまうからです。逆に、事情を知らない親族からの「もっとこうすればいいのに」という助言も、深く刺さります。

こういうとき、いちいち説明しなくて大丈夫です。事情を分かっている人(ケアマネジャーや、同じ立場の人の集まり)に話せる場所を一つ持っておくほうが、たぶん役に立ちます。それについては⑦の章で書きます。

④ こんなサインが続いていたら(相談の目安として)

⚠️ これは「診断」ではありません
以下に挙げるのは、病気を見分けるためのチェックリストではありません。当てはまったら病気だ、という意味では一切ありません。

介護をしていれば、こうしたことは誰にでも起こります。ここでお伝えしたいのは、それが「続いているとき」は、一人で抱えずに誰かに相談していい合図だということだけです。判断は、医師などの専門家に任せてしまってください。あなたが自分で「これは病気か、そうでないか」を見極める必要はありません。
📝 相談の目安になる変化
  • 夜、眠れない。あるいは眠っても疲れが取れない。朝起きるのがつらい
  • 食欲がない。または食べすぎてしまう。体重が急に変わった
  • 理由がはっきりしないのに、涙が出る
  • 以前は気にならなかった些細なことで、強く苛立つ
  • 好きだったこと、楽しかったことが、何も楽しく感じられない
  • 親につらく当たってしまう。声を荒らげてしまい、あとで自分を責める
  • 「自分がいなくなればいいのに」という考えが浮かぶ
  • 頭痛・めまい・胃の痛み・動悸など、体の調子が続けて悪い
  • お酒の量が増えた
  • 誰にも会いたくない。連絡を返す気力がない

「介護うつ」という言葉を見かけたことがあるかもしれません。これは医学的な診断名として決まっているものではなく、介護をしている中で気分の落ち込みが続く状態を指して、一般によく使われている呼び方です。ですから「これは介護うつだろうか」と自分で判定しようとしなくて大丈夫です。名前がつくかどうかより、いま実際につらいかどうかのほうが大事です。

上のような変化が2週間ほど続いているようなら、それは「相談してもいい」というより「相談していいタイミング」です。相談先は、この記事の⑪の章にまとめています。

⚠️ 「消えたい」という気持ちが出てきているとき
自分を傷つけたい気持ちや、「いなくなりたい」という考えが浮かんでいるときは、できるだけ早く、人につながってください。介護の話をする準備が整っていなくても構いません。

厚生労働省が案内している「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)は、全国共通の番号にかけると、かけた場所の都道府県・政令指定都市の公的な相談機関につながる仕組みです。受付の曜日・時間は都道府県によって異なり、050で始まるIP電話からはつながらないため、その場合は各自治体の窓口の番号にかける必要があります。番号の一覧は、厚生労働省のサイト(「こころの健康相談統一ダイヤル」のページ、および相談窓口をまとめた「まもろうよ こころ」)で確認できます。

身近な人には話しづらいことでも、専門の窓口なら話せることがあります。

⑤ 「休むこと」は手抜きではない——レスパイトケアという考え方

レスパイトケアという言葉があります。「レスパイト(respite)」は英語で「休息」「一時的な中断」という意味です。介護の分野では、在宅で介護している家族が一時的に介護から離れて休めるように、その間のケアを外部が代わりに担う支援のことを指します。

大事なのは、これが「家族が甘えるための例外的なサービス」ではないということです。介護保険のサービスには、制度の目的そのものに「家族の負担の軽減」が含まれているものがあります。

💡 制度が「家族の負担の軽減」を目的に挙げている例
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)——利用者に短期間入所してもらい、入浴・排せつ・食事などの介護や日常生活上の世話、機能訓練を行うサービスです。その目的として、利用者本人の心身の機能の維持とあわせて、利用者の家族の身体的および精神的な負担の軽減を図ることが挙げられています
  • デイサービス(通所介護)など——日中、施設に通ってサービスを受けるもの。本人の生活を支えるとともに、家族が介護から離れられる時間をつくる役割も持っています
つまり、「家族が休むこと」は制度が想定している正当な使い方です。「本人のためだけに使うべきもの」ではありません。

ここを知っているだけで、気持ちがずいぶん変わることがあります。ショートステイを頼むときに「私が楽をしたいからお願いする」と後ろめたく感じてしまう方は多いのですが、そもそも制度が「家族の負担の軽減」を目的に含めているのですから、遠慮する理由はありません。

また、レスパイトという考え方は介護保険だけのものではありません。医療的なケアが必要な方の場合は医療機関の短期入院という形が取られることもあり、障害福祉の分野にも同じ考え方に基づく仕組みがあります。どの仕組みが使えるかは、ご本人の状態や認定の内容によって変わりますので、ケアマネジャーや地域包括支援センターに「休む時間をつくりたい」と伝えて、使える形を一緒に探してもらうのが確実です。

💚 「休みたい」と言うときの言い方
  • 「私が休みたいので」——これで十分な理由です。言い換える必要はありません
  • 「このままだと続けられなくなりそうです」——専門職にとって、これは非常に重要な情報です。遠慮せず伝えてください
  • 「月に1回、2日だけでも預けられますか」——具体的な形で聞くと、話が進みやすくなります
  • 「自分の通院に行きたいので、その日を空けたいです」——予定に合わせた調整を相談できます

⑥ 実際に休むための具体的な方法

では、実際にどうやって休む時間をつくるか。介護保険のサービスを使うのが基本の道筋になります。それぞれのサービスの詳しい内容は個別の記事に譲りますが、「休む」という目的から見た整理をしておきます。

方法 どんな休みがつくれるか
ショートステイ
(短期入所)
まとまった日数、夜も含めて離れられるのが最大の特徴です。連続して利用できる日数には上限があり(連続30日までとされています)、また要介護認定の有効期間との関係で使える日数の目安が決まっています。「自分が入院・手術をする」「冠婚葬祭で遠出する」「何日か眠りたい」といったときに検討されます。人気の施設は予約が埋まりやすいため、早めの相談が現実的です
デイサービス
(通所介護)
日中の時間ができます。週に何回・何曜日に行くかをケアプランで組んでもらえるので、「自分の通院はこの曜日」「この曜日は仕事に集中する」といった生活の組み立てができます。本人にとっても、家族以外の人と関わる場になります
訪問介護
(ヘルパー)
身体介護(入浴・排せつなどの介助)や生活援助(掃除・調理など)を自宅で担ってもらえます。いちばん体に負担がかかる場面を人に渡せるのが大きい点です。ただし、できることの範囲には制度上の決まりがあります
訪問看護・
訪問リハビリ
医療や体の状態に関わる部分を専門職に見てもらえます。「これは大丈夫なのか」という不安を相談できる相手が増えることは、精神的な負担の軽減につながります
福祉用具・
住宅改修
手すり、ベッド、車いす、段差の解消など。介助そのものを軽くする方向の対策です。介護保険で貸与や費用の支給が受けられるものがあります
自治体独自の
家族介護者向け事業
介護保険の「地域支援事業」の中に、市町村が実施できる家族介護支援事業という枠があります。介護方法を学ぶ教室、介護している家族同士の交流の場、介護用品の支給など、内容は市区町村によって大きく異なります。お住まいの自治体や地域包括支援センターで「家族向けの支援はありますか」と聞いてみてください
📝 ケアマネジャーへの伝え方が、いちばんの近道です
  • 「自分の状態」を具体的に伝える——「夜に3回起こされていて、平均して4時間くらいしか眠れていません」のように、事実を数字で伝えると伝わりやすくなります
  • 我慢して「大丈夫です」と言わない——ケアマネジャーは、家族が大丈夫だと言えば、そこは手当てしなくてよい部分だと判断します。つらいところは、つらいと言ってください
  • ケアプランは変更できます——一度決めたら終わりではありません。状態や生活が変わったら、組み直してもらえます
  • 相性が合わないときは変更を相談できます——ケアマネジャーは変更できます。担当している事業所や、地域包括支援センターに相談してみてください

在宅で使えるサービスの全体像は、一人暮らしの親に使える在宅介護サービスまとめでも整理しています。働きながら介護している方は、仕事と介護の両立|介護休業・介護休暇など使える制度もあわせてご覧ください。介護休業や介護休暇、残業の免除といった制度は、休む時間をつくるための道具でもあります。

⑦ 気持ちを言葉にできる場所

サービスで時間をつくることと同じくらい大事なのが、気持ちを言葉にできる相手を持つことです。「話しても何も解決しない」と思われるかもしれません。でも、介護のつらさの一部は「誰にも分かってもらえない」というところから来ています。そこは、話すことでしか変わらない部分です。

地域包括支援センター

市区町村が設置している高齢者の総合相談窓口です。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーといった専門職が配置されています。相談は無料で、親が要介護認定を受けていなくても、まだ何のサービスも使っていなくても相談できます。

そして大事なのは、介護している家族自身の相談先でもあるということです。「親のことではなく、自分がつらいのですが」という入り方でまったく問題ありません。先に触れた厚生労働省の家族介護者支援マニュアルは、まさに市町村と地域包括支援センターが家族介護者を支援するために作られたものです。

ケアマネジャー(介護支援専門員)

すでに介護サービスを使っている場合、もっとも身近な専門職です。サービスの調整だけでなく、いまの状況をいちばん具体的に理解してくれる相手でもあります。「困っていることはありませんか」と聞かれたときに、遠慮して「大丈夫です」と答えてしまうのは、いちばん惜しいところです。

かかりつけ医

眠れない、食べられない、体調が続けて悪い——こうしたことは、医師に相談していい内容です。「介護で疲れているだけだから」と自分で結論を出さないでください。必要があれば、専門の医療機関を紹介してもらえます。親の受診に付き添ったときに、自分のことも少し相談してみる、という始め方でも構いません。

家族会・介護者の会

同じ立場の人が集まって話す場です。専門職に相談するのとは違って、「説明しなくても分かってもらえる」という安心感があります。愚痴を言うだけでもいい場所として運営されているところも多くあります。

認知症のある方への接し方そのものに悩んでいる場合は、認知症の症状への向き合い方もあわせてご覧ください。同じことを何度も聞かれる、物を盗られたと言われる——そうした場面ごとの考え方をまとめています。

認知症のある方を介護している場合は、認知症カフェという形の場も各地にあります。認知症のある方とその家族、地域の人、専門職などが一緒に過ごせる場で、NPOや医療法人、社会福祉法人などによって運営されています。開催の場所や日程は、地域包括支援センターや自治体の窓口で教えてもらえます。

☎️ 電話で相談できる窓口(認知症の介護について)
公益社団法人 認知症の人と家族の会「認知症の電話相談」
フリーダイヤル 0120-294-456(土・日・祝日を除く毎日/午前10時〜午後3時)
携帯電話・スマートフォンからは 050-5358-6578(通話料は有料)

研修を受けた介護経験のある方が相談に応じる窓口です。認知症についての知識や介護の方法だけでなく、介護の悩みやグチも聞いてもらえる窓口として案内されています。LINEでの相談にも対応しています。各都道府県の支部でも電話相談が行われています。
※上記は2026年7月26日時点で同会の公式サイトに掲載されていた内容です。最新の受付時間は公式サイトでご確認ください。
⚠️ ケアラー(介護者)向けの窓口を設けている自治体もあります
近年、介護をしている人(ケアラー)を支援するための条例を定めたり、ケアラー専用の相談窓口を設けたりしている自治体が出てきています。内容は自治体によってまったく違います。

お住まいの市区町村の公式サイトで「ケアラー」「介護者支援」「家族介護者」といった言葉で探してみると、その地域独自の支援が見つかることがあります。分からなければ、地域包括支援センターに「介護している家族向けの支援はありますか」と聞くのがいちばん早いです。

⑧ 罪悪感との向き合い方

介護している方の多くが、罪悪感を抱えています。サービスを使うことに、休むことに、施設を考えることに、そして「つらい」と思ってしまう自分自身に。

この罪悪感は、たぶん簡単には消えません。「気にしなくていい」と言われて消えるものでもありません。ただ、いくつか整理しておけることがあります。

💡 罪悪感について、整理しておきたいこと
  • 罪悪感があるのは、大切に思っているからです。どうでもいい相手のことで、人は罪悪感を持ちません
  • 「自分がやること」と「本人にとって良いこと」は、必ずしも同じではありません。疲れきった家族の介助より、専門職の介助のほうが本人にとって安全で快適な場面は、実際にあります
  • 共倒れになれば、いちばん困るのは介護される側です。あなたが続けられる形を探すことは、本人のためでもあります
  • 優しくできない自分を責めなくて大丈夫です。優しさは体力と余裕から出てくるもので、余裕がなくなれば誰でも出せなくなります。性格の問題ではありません

施設への入居を考えるときの罪悪感については、親を施設に入れるのはかわいそう?罪悪感との向き合い方でもっとくわしく書いています。「かわいそう」という気持ちが出てくる方には、そちらもあわせて読んでいただけたらと思います。

⑨ きょうだい・親族と分かり合えないとき

介護の話でいちばんこじれやすいのが、実は親のことではなくきょうだいや親族との関係です。「自分ばかり負担している」「たまに来て口だけ出す」「お金の話をすると空気が悪くなる」。ここで疲れきってしまう方は少なくありません。

なぜ温度差が生まれるのか

離れて暮らしている家族は、親の変化を「点」でしか見ていません。年に数回会うだけなら、そのときの様子だけが情報になります。一方、同居や近居で介護している人は、日々の連続を見ています。この情報量の差が、そのまま認識の差になります。

だから、「分かってくれない」のは相手が冷たいからだとは限りません。単純に、見ている情報が違うということが、かなりの割合を占めます。

📝 温度差を埋めるためにできること
  • 記録を共有する——「今日は夜中に2回起きた」「デイサービスを嫌がった」といった事実を、日付とともに残して共有します。感想より事実のほうが伝わります。家族のグループチャットに短く書くだけでも構いません
  • お願いを具体的にする——「もっと手伝って」ではなく「月に1回、土曜の午前に来てほしい」「おむつ代を負担してほしい」のように、内容と頻度を具体的に伝えるほうが動いてもらいやすくなります
  • 「同じこと」を求めない——お金を出す、手続きを担当する、電話で様子を聞く、遠方から書類を郵送する。これらも分担です。全員が同じことをする必要はありません
  • 第三者を交える——ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員に同席してもらい、専門職の口から現状を説明してもらうと、話が通ることがあります。家族同士では感情が入ってしまうところを、事実の説明として整理してもらえます
  • 担当者会議に参加してもらう——ケアプランを検討する会議(サービス担当者会議)に、離れて暮らすきょうだいにも参加してもらう(オンライン参加が可能な場合もあります)。専門職が集まる場に一度入ると、状況の理解が一気に進むことがあります

それでも分かり合えないとき

正直に言えば、どれだけ工夫しても関係が変わらないこともあります。そのときは、「きょうだいを動かすこと」を目標にするのをやめるという選択もあります。

相手を変えるのに使うエネルギーを、専門職やサービスを増やすほうに使う。そのほうが確実に負担が減る場合があります。「家族なのだから協力すべきだ」というのは正しいのですが、正しさで人は動きません。あなたが疲れきることのほうが、避けるべき事態です。

また、費用の負担や親の財産の管理をめぐって折り合いがつかないときは、地域包括支援センターや自治体の窓口で、成年後見制度など公的な仕組みの相談ができる場合があります。家族だけで抱えず、外の仕組みを入れることを考えてみてください。

⑩ 限界の前に、選択肢を知っておく

ここまで、休み方と相談先について書いてきました。それでも、在宅での介護を続けるのが難しくなっていくことはあります。親の状態が進んだ、自分の体が持たなくなった、仕事や家庭との両立が成り立たなくなった——理由はさまざまです。

そのときに考える選択肢のひとつが、施設への入居です。ここで大事なのは、これを「限界が来てから考えること」にしないほうがいいということです。

💡 早めに調べておくと、なぜ楽になるのか
  • 選択肢を知っているだけで、追い詰められ方が変わります——「これしかない」と思っている状態と、「他にも道がある」と知っている状態では、同じ状況でも受け止め方が違ってきます
  • 調べるのには時間と体力が必要です——限界の状態で、施設の種類・費用・空き状況を調べて見学して比べるのは、かなり大変です。少しでも余裕のあるうちのほうが動けます
  • すぐに入居できるとは限りません——施設によっては、申し込んでから入居までに時間がかかることがあります。「今すぐ必要」になってから探し始めると、間に合わないことがあります
  • 調べることは、決めることではありません——情報を集めても、入居させない選択をしていいのです。知っておくだけでいい、という使い方をして構いません

施設を考えることは「逃げ」ではありません

これは、この記事でどうしてもお伝えしたかったことです。

施設に頼ることは、介護を投げ出すことではありません。介護の担い方を変えるということです。施設の種類によっては、夜間も職員が常駐して見守る体制があります。家族が交代なしで担っている部分を、交代のある体制に移す——それは、ご本人の安全という点でも、家族が生活を続けられるという点でも、現実的な選択のひとつです。

そして、家族が倒れずに済めば、面会に行ける・話を聞ける・必要なときに動ける関係を、長く続けられます。介護の形が変わっても、家族であることは変わりません。

もちろん、費用のこと、本人の気持ちのこと、家族の中の意見の違い——簡単に決められることではありません。だからこそ、「決める」の前に「知る」を挟むのが現実的です。施設の種類や費用の全体像は施設の種類の記事や費用の記事で整理していますし、在宅を続けるかどうかの判断材料は在宅介護の限界サイン8つ|施設入居を考えるタイミングにまとめています。

調べ始めると情報量が多く、それ自体で疲れてしまうこともあります。そういうときは、無料で相談できるサービスを入り口にするのも一つの方法です。状態や希望を伝えると、条件に合う施設の候補を一緒に整理してもらえます。もちろん、話を聞いてみて「今は違う」と判断して構いません。

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「もう限界かもしれない」と感じているなら
施設を考えることは、介護から逃げることではありません。共倒れを防ぐための、現実的な選択肢のひとつです。今すぐ決める必要はありません。まずは「どんな選択肢があるのか」を知るところから。無料の相談サービスなら、状態やご希望をふまえて一緒に整理してもらえます。
▶ 施設について無料で相談する

あわせて、公的な窓口にも必ず相談してください。地域包括支援センターやケアマネジャーは、施設という選択肢だけでなく、在宅を続ける方法も含めて、費用や地域の事情をふまえて一緒に考えてくれます。どちらか一方ではなく、両方を使うのがいちばん確実です。

⑪ 相談先まとめ

「誰に何を話せばいいのか分からない」というときのために、窓口ごとの役割を整理しておきます。どこから始めても構いません。迷ったら地域包括支援センターです。

相談先 何を相談できるか
地域包括支援センター 市区町村が設置している高齢者の総合相談窓口。相談は無料で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門職がいます。介護保険の申請、使えるサービス、施設のこと、お金のこと、そして介護している家族自身のつらさも相談できます。親が要介護認定を受けていなくても相談できます。担当のセンターは、親が住んでいる地域のものになります
ケアマネジャー すでにサービスを使っている場合の、いちばん身近な相談相手。ショートステイやデイサービスの追加、ケアプランの組み直し、自分の通院に合わせた日程調整など。「このままだと続けられない」という状態は、必ず伝えてください
かかりつけ医 眠れない、食欲がない、体調が続けて悪い、気分の落ち込みが続く——こうしたことは医師に相談していい内容です。必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらえます。自分で「介護疲れだから仕方ない」と結論を出さないでください
市区町村の高齢者福祉の窓口 自治体独自の支援(介護している家族向けの教室や交流の場、介護用品の支給など)について。内容は自治体によって大きく異なります。「家族介護者向けの支援はありますか」と聞いてみてください
家族会・介護者の会
認知症カフェ
同じ立場の人と話せる場。説明しなくても分かってもらえる安心感があります。開催情報は地域包括支援センターや自治体の窓口で教えてもらえます
認知症の人と家族の会
「認知症の電話相談」
フリーダイヤル 0120-294-456(土・日・祝日を除く毎日/10時〜15時)/携帯・スマホからは 050-5358-6578(通話料有料)。研修を受けた介護経験者が対応。介護の悩みやグチも聞いてもらえる窓口として案内されています
こころの健康相談
統一ダイヤル
0570-064-556。全国共通の番号にかけると、かけた場所の都道府県・政令指定都市の公的な相談機関につながります。受付の曜日・時間は都道府県によって異なります。IP電話(050で始まる番号)からはつながらないため、その場合は各自治体の窓口の番号へ。番号一覧は厚生労働省のサイトで確認できます
勤務先の人事・総務 働きながら介護している場合。介護休業・介護休暇、残業の免除、短時間勤務、テレワークなど。2025年4月から、会社には制度を説明する義務があります。くわしくは仕事と介護の両立の記事へ
💡 「何を話せばいいか分からない」でも大丈夫です
相談の場で、うまく説明できる必要はありません。「疲れています」「もう限界かもしれません」——それだけで十分に伝わります。あとは相手が聞いてくれます。
整理して話せる状態なら、そもそもそこまで追い詰められていないはずです。うまく話せないまま行って大丈夫です。
相談窓口の全体像は、介護の相談はどこにすればいい?無料で使える相談窓口まとめでもくわしく紹介しています。

📌 まとめ

  • 介護でつらくなるのは、性格や努力の問題ではありません。終わりの時期が決まっておらず、交代もない仕事を担っているからです
  • 負担は身体的・精神的・経済的・時間的に重なっています。まずは眠る時間と一人になれる時間を取り戻すほうから手をつけるのが現実的です
  • 眠れない・食べられない・涙が出る・楽しめない・親につらく当たってしまう——こうしたことが続いているときは、相談の合図です。自分で病気かどうかを判断する必要はありません
  • 「介護うつ」は医学的な診断名として決まったものではなく、一般に使われている呼び方です。名前より、いまつらいかどうかが大事です
  • レスパイトケア=介護している家族が休めるように、その間のケアを外部が担う支援のこと
  • ショートステイ(短期入所生活介護)は、制度の目的そのものに「家族の身体的・精神的な負担の軽減」が含まれています。休むために使うのは、正当な使い方です
  • 休む方法は、ショートステイ/デイサービス/訪問介護/訪問看護/福祉用具・住宅改修/自治体独自の家族介護者支援。ケアマネジャーに「休みたい」とはっきり伝えることが近道です
  • 気持ちを話せる場所を持つ——地域包括支援センター、ケアマネジャー、かかりつけ医、家族会・介護者の会、認知症カフェ、電話相談
  • きょうだいとの温度差は、多くの場合見ている情報量の差から生まれます。記録を共有し、お願いは具体的にし、第三者を交える
  • 施設を考えることは逃げではなく、介護の担い方を変えること。限界が来る前に「知っておく」だけでも意味があります
  • 迷ったら地域包括支援センターへ。相談は無料で、介護している家族自身のことも相談できます

介護をしていると、自分の暮らしを大切にすることに後ろめたさを感じるようになっていきます。眠ること、食べること、誰かと笑うこと、病院に行くこと。そういう当たり前のことが、いつのまにか「わがまま」に思えてくる。

でも、あなたの暮らしはあなたのものです。それを大切にすることは、誰かを犠牲にすることではありません。あなたが健康でいられることは、親にとっても、いちばん確かな支えです。

助けを求めることは、負けではありません。どうか、一人で抱えないでください。

⚠️ この記事について
この記事は、厚生労働省が公開している情報(「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル~介護者本人の人生の支援~」平成30年3月、介護保険サービスに関する案内、こころの健康相談統一ダイヤルの案内など)や、公益社団法人認知症の人と家族の会の公式サイトの情報をもとにまとめた一般的な情報(2026年7月時点)です。
病気の診断や治療の判断を目的とするものではありません。心や体の調子について気になることがあるときは、必ずかかりつけ医などの医療機関にご相談ください。
制度や支援の内容は法改正や自治体の方針によって変わることがあり、お住まいの市区町村によって使えるものが異なります。実際に利用するときは、地域包括支援センター、担当のケアマネジャー、市区町村の窓口で最新の内容をご確認ください。相談窓口の受付時間などは、各窓口の公式サイトでご確認ください。

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